「お見舞いをいただいたけど、お返しって必要?」「どんな品物を選べば失礼にならないの?」
ケガや病気から快復したとき、感謝の気持ちをどう形にするかで迷う方は多いと思います。
お見舞返しは堅苦しいものではありませんが、対応を間違えると相手に気を遣わせたり、マナーを知らないと思われてしまうことも…。
私は普段ギフト販売の仕事をしていて、「お見舞返しを選びに来ました」というお客様を日々お手伝いしています。
その経験から、実際に多く選ばれている品物や金額、迷ったときに役立つマナーのポイントを分かりやすくまとめました。
お見舞返しをする背景
お見舞返しは、何かをいただいたらお返しをする習慣の1つで、気にかけてくれた人へ快復と感謝を伝える意味があります。
入院や療養中にお見舞いをもらうと、励まされて元気が出ますよね。
その感謝の気持ちを、元気になったタイミングで品物に込めてお返しする、それがお見舞返しの基本的な考え方です。

感謝の気持ちを形にする習慣
お見舞返しで一番大事なのは感謝の気持ち。
たとえば、お菓子のように気軽に受け取ってもらえるものを贈れば、相手も負担に感じず「元気になったんだな」と安心してくれます。
また、お見舞いは病気やケガといった心配な出来事に対していただくものなので、お返しには「あとに残らないもの=消えてなくなるもの」がいいとされています。
明るい気持ちで区切りをつけられる、そんな意味合いもあるんですね。
だから、難しく考えすぎなくても大丈夫。
「元気になったよ」「ありがとう」その二つが伝わることが大切です。
お見舞返しを贈るタイミング
お見舞をいただいて最初に気になるのは、お返しするならいつ返すべきかじゃないでしょうか。
ここに来て下さった方も「お見舞いをいただいたから、早く返したほうがいいのかな?」と悩んでいるかと思います。
でも実際は、すぐ返さないといけない決まりはなく、体調が落ち着いてからで大丈夫なんです。
焦らず、自分の生活が落ち着いたタイミングで贈るのが一番自然で、相手にとっても安心につながります。
では、詳しい送るタイミングの目安について順番に見ていきましょう。
退院や快復してからが基本
お見舞返しを贈るのは、退院したあとや病状が快復してからが基本のタイミングです。
入院中や療養中は、まだ体も本調子ではないので早くからお返しを考えいても気が休まらないですよね。
むしろ退院の報告や「元気になりました」というメッセージを添えて贈ることで、相手も「良かった」と安心できます。
私が店で対応したお客様も「この前退院して、お返しを探しに来た」と言われる方ばかりです。
もし、「まだ療養中だけどすぐに送らなきゃ」と思っているのなら、焦らずにまずはどんなものを贈ることが多いか知っておくだけでも十分です。

1週間〜1ヶ月以内が目安
お見舞返しを贈る目安は、退院や快復から1週間〜1ヶ月以内とされています。
しかし1ヶ月を少し過ぎてしまったからといって、失礼になるわけではありません。
大切なのは「忘れずにお礼の気持ちを届ける」ことです。
もし遅くなってしまった場合は、挨拶が遅れことをひとこと添えると印象がぐっと良くなりますよ。

相手に合わせた贈るタイミング
次に贈る相手との関係性別の、タイミングにも触れておきましょう。
遠方に住んでいる相手 | 移動や配送の都合で少し遅れても問題なし |
職場の同僚や上司 | 出社のタイミングでまとめて渡すのが自然 |
親しい友人や家族 | 次に会う機会に渡してもOK |
つまり「必ずこの日までに」という決まりはなく、回復の報告と感謝が伝わるタイミングであれば十分です。
お見舞返しの金額相場
贈るタイミングの次に意識したいのが、金額について。
「高すぎると相手に気を遣わせてしまうし、安すぎるのも失礼じゃないかな…。」
お見舞返しで一番迷いやすいのが、この「金額相場」です。
実は、そのバランスを取るための、ある程度の目安があるんです。
金額相場に迷わないためにも、詳しく見ていきましょう。

いただいた額の1/3〜半額程度が目安
一般的には、いただいたお見舞いの金額の「3分の1〜半額程度」を返すのがちょうどよいとされています。
たとえば、1万円のお見舞いをいただいた場合は、3千円〜5千円ほどの品物を選ぶイメージです。
この金額帯は、相手に「気持ちをちゃんと受け取りました」というお礼を伝えつつ、重すぎないライン。お返しが豪華すぎると相手が余計な気を使わせてしまいます。
もちろんこれは一般的な目安。
とても親しい間柄なら金額にこだわらず、ちょっとしたお菓子に「元気になったよ」というメッセージを添えるだけでも十分なこともあります。
しかし、職場や取引先などのフォーマルな関係では、きちんと相場に沿ったものを選ぶ方が安心です。

お見舞返しに選ばれる定番の品物
お見舞返しの品物選びで大切なのは、相手に負担をかけないことと感謝の気持ちが伝わること。
そのため「あとに残らないもの=消えてなくなるもの」や「実用的な消耗品」が定番になっています。
ここでは、よく選ばれる代表的な品物がどんなものかについて触れていきます。

お菓子
お見舞返しで選ばれやすいものは、なんといってもお菓子。
特にクッキーや焼き菓子、ゼリーや羊羹など、日持ちがして分けやすいものが好まれます。
また、個包装のお菓子は職場や家族みんなで分けやすく、受け取った側にも喜ばれやすいポイントですよ。
ジュース
フルーツジュースや野菜ジュースの詰め合わせも人気です。
小さなお子さんからお年寄りまで幅広く楽しめるので、どんな相手にも安心して贈れますよ。
常温で保存できるタイプなら、相手の負担にならないのもメリット。夏場のお返しにもピッタリですね。
タオル
タオルは「悪いことは続かせない」という意味を持った縁起物として、お返しでよく贈られる消耗品です。
特に上質なタオルは、肌触りが良く長く使えます。日常的に使うものだからこそ、良い品質のタオルを贈ると感謝の気持ちがより伝わりやすいでしょう。
また、フェイスタオルやバスタオルなどサイズの違うセットは、用途に合わせて使い分けができるので、実用性も高く喜ばれます。
洗剤
洗剤もお見舞返しでよく選ばれる品物。毎日の生活で必ず使う消耗品なので、実用性の高さもポイントです。
ただし、洗剤は香りや成分に好みが分かれやすいため、選ぶときには「無香料」「低刺激」のギフト用セットを選ぶと安心です。
また、使えばなくなる「消えもの」なので、病気やケガを長引かせないという意味合いにもつながり、縁起の面でも快気祝いに適しています。実用性と縁起の良さを兼ね備えたギフトと言えますね。
カタログギフト
「相手に好きなものを選んでもらえる」のがカタログギフトの魅力。
好みが分からない相手や、職場・取引先などフォーマルなお付き合いの場合に安心のお返しです。
価格帯も幅広く選べるので、いただいたお見舞いの金額に合わせやすいのも利点です。
商品券
最近では、商品券やギフトカードを選ぶ人も増えています。
他の定番品と比べるとやや味気ない印象なものの、相手が自由に使えるので実用性は抜群です。
特に若い世代や、遠方で配送する相手には喜ばれることも多いですよ。
ただし、目上の方やご年配の方には「現金や近いものを返すのは失礼」と感じる方もいるため、相手との関係性を考えて選ぶようにしましょう。
避けたい品物
定番の品物についてお話ししましたが、お見舞返しでは昔から逆に「これは選ばない方がいい」とされているものがあります。
知らずに送ってしまうと、相手の気を悪くしてしまいかねません。
安心して品物を選ぶためにも、どんなものを避けるべきか具体的な品物と、その理由を説明します。

寝具
パジャマやシーツ、布団カバーなどの寝具類は、一見すると実用的に思えますが、「病床に寝付く」ことを連想させるためタブーとされています。
特に快気祝い・お見舞返しは「元気になりました」という区切りを示すものなので、入院や療養を思い出させる寝具はふさわしくありません。
贈り物として残り続けることもあり、病気のイメージを引きずってしまう点でも避けた方が良いです。
刃物
包丁やハサミなどの刃物は実用性は高いですが、「縁を切る」という言葉を連想させることから、お祝いごとやお返しの品には不向きとされています。
最近では縁起物として扱われることも増えてきたそうですが、まだまだ縁を切るイメージの強い刃物は、快復のお礼に選ぶと不快に思われる可能性があります。
相手があまり気にしないタイプであっても、念のため避けておいた方がいいでしょう。
緑茶
緑茶は普段の贈答品としてはよく使われますが、快気祝い・お見舞返しには不向きです。
その理由は、法事や弔事の引き出物に使われることが多く、「お悔やみごと」を連想させるため。
特に年配の方やマナーに敏感な相手には好まれない可能性があるので、別の飲み物やお菓子を選ぶ方が無難です。
鉢植え
観葉植物や花の鉢植えは「根付く=寝付く」との言葉の連想から、病気や入院が長引くイメージにつながるとされています。
このため鉢植えは、特にお見舞でいただくものとしてタブーとされていますが、お見舞返しでも同じように避けられています。
また、お見舞返しには「区切り」「快復」の意味が込められているため、ずっと残る鉢植えは選ばないよにしましょう。
食器
お皿やグラスなどの食器も避けられている品物です。
普段の贈り物としては便利ですが、「割れる=壊れる」と悪いものを連想するため、回復を祝うお返しには縁起が良くないとされています。
御見舞返し本来の意味を考えると、やはり消耗品や食品などに比べて贈り物に適していません。
ハンカチ
ハンカチは漢字で「手巾(てぎれ)」と書きますが、この「てぎれ」という音が「手切れ」を連想させることから、贈答には不向きとされています。
ただ、刃物と同様に最近では気にしないケースも増えてきているようです。
しかし、ちょっとしたプレゼントとしては使いやすいものの、感謝の気持ちを表す場面にはふさわしくありません。
櫛
櫛(くし)は「苦」や「死」を連想させる語呂合わせから、贈り物には避けられてきました。
特にお祝い事や人生の節目ではタブー視されやすく、お見舞返しでも同様です。
縁起物は語呂合わせによるものが多く、最近は気にしない人が増えてきたとしても、忌み言葉を連想するものは避けておくべきです。
相手との関係性に合わせた選び方
お見舞返しは「誰に対して贈るのか」によって、ふさわしい品物の内容やボリュームが少し変わってきます。
具体的には親しい相手には気軽に受け取れるものを、職場や目上の人にはきちんと感謝が伝わるものを選ぶといいでしょう。
ここでは関係性ごとの選び方のポイントを紹介します。

親しい友人・親戚向け
気心の知れた友人や親戚には、「元気になったよ」という気持ちを伝えること自体に意味があります。形式にとらわれすぎず、気軽に受け取ってもらえるものを選んでみてはどうでしょうか。
たとえば…
- 焼き菓子やゼリーなどのスイーツ
- ジュースやコーヒーの詰め合わせ
- 商品券
このようなものなら相手が構えずに「ありがとう」と受け取ってもらえやすいですね。
暮らしの中でちょっとした楽しみや便利さを感じてもらえるような品物を選ぶと、自然に感謝が伝わります。
会社や目上の人向け
職場の同僚や上司、取引先など、フォーマルな関係の相手には、ややきちんとした印象を与える品物を選ぶのが安心です。
- 上質なタオルセット
- 個包装のお菓子の詰め合わせ
- カタログギフト
また、会社全体でお見舞いをいただいた場合のお返しにはみんなで分けられるものがいいでしょう。
個包装のお菓子や飲み物セットなどは配りやすく便利です。
金額の目安も相場に沿って、いただいた額の1/3〜半額程度を意識すると、失礼のないお返しになります。
のし・表書きのマナー
お見舞返しを選んだら、忘れてはいけないのがのしや表書きのマナー。
品物そのものよりも、実はこうした細かいところで「きちんとしているな」と好意的にみられることが多いものです。
ここでは基本的なポイントを押さえておきましょう。
お見舞返しののし紙
お見舞返しののし紙に使う水引は、紅白の結び切りが基本です。
これは結び切りが「一度きりで繰り返さない」という意味を持つからです。
お見舞返しでは「病気やけがを繰り返さず、快復が長く続きますように」という願いを込めて使われます。
ただ、紅白の結び切りにも2種類あります。
その違いは、のし飾りが「ある」か「ない」か。
お見舞ではのし飾りのない掛け紙が付いた品をいただきますが、お返しではのし飾りを付けます。これは次のような意味合いの違いを表しているためなんですね。
お見舞い | 無事を願う気持ち |
お見舞返し | 快復の報告と感謝(めでたい事) |

つまり、めでたいことに対する品にはのし飾りがつくと覚えておいてください。
また、蝶結びは出産や進学などの何度あってもよい祝いごとに使うため、お見舞返しではタブーです。
水引の色や形を間違えると印象が大きく変わるので注意しましょう。
快復の状況による表書きの違い
お見舞返しは退院や快復してからが基本と言う内容を伝えましたが、「完全によくなった時」や「もう少し療養が必要な時」、または「近しい関係の人に対して」で書くべき表書きが変わってきます。
具体的には次のようになります。
快気祝 | 病気やケガが全快した場合 |
快気内祝 または「内祝」 | 親せきなど近しい関係の人に対して快気祝を贈る場合 |
御見舞御礼 | 退院や快復をしたがまだ療養が続く場合に、とりあえず感謝を伝えるとき |
それぞれの状況や関係性に合わせて適切な表書きを選ぶことで、元気になった報告と感謝の気持ちが、誤解なく相手に伝えられますよ。

名前の書き方
のし紙の下段には、快復した本人の名前を書きましょう。
基本はフルネームで書くのが丁寧ですが、名字だけで分かる場合は名前を省略して書くことが多いです。
また、親戚や兄弟など日ごろから付き合いのある関係の場合は、名前だけでもいいでしょう。
相手や周りが同じ名字で分かりにくい場合は地名などを追加して書かれる方もおられますよ。
大切なのは誰からのお返しかが分かるようにすることです。

内のし・外のしの違い
私の店に買いに来られる方もよく悩まれるのが、のし紙を包装の内側に付けるか・外側に付けるかです。
明確な決まりはありませんが、迷いを少なくするためある程度意識しておくとよい基準をお話しします。
内のし | ・控えめに感謝を伝えたい時 ・快気内祝や御見舞御礼の場合に選ばれることが多い |
外のし | ・感謝の気持ちをはっきりと伝えたい時 ・目上の方やフォーマルな関係の相手の場合に多い |
どちらを選んでも失礼になることはありませんが、相手との関係を考えて使い分けるといいでしょう。
お見舞返しが不要な場合
基本的にはお見舞いをいただいたらお返しをするのが礼儀ですが、場合によってはいただいた方から「お返しはいらない」と言われることがあります。
その言葉に甘えて全く何もしないのは気が引けるかもしれませんが、不要と言われた場合は無理に品物を用意する必要はありません。
その場合は、「気遣っていただきありがとうございました。おかげさまで元気になりました」など、回復の報告を兼ねた御礼状を渡しましょう。
それだけでも相手に気持ちがしっかり伝わります。

まとめ
お見舞返しは、決まりごとに縛られるものではなく、「ありがとう」と「元気になりました」を伝えるための習慣です。
- タイミングは退院や回復が落ち着いてから
- 金額はいただいた額の3分の1〜半額程度を目安に
- 品物は「消えてなくなるもの」や実用的なものを中心に
- のしや表書きで回復の報告と感謝を伝える
こうした基本を押さえておけば、相手に安心して受け取ってもらえるお返しができます。
大切なのは形式そのものではなく、気持ちがきちんと伝わるかどうか。
お菓子やタオルのような気軽に受け取れる品に、ひとことでもお礼の言葉を添えれば、それだけで十分に思いが届きますよ。
お見舞いをしてくれた方への感謝を、無理なく、あたたかくお返しに込めてくださいね。
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